難病②Parkinson病

Parkinson病


- Minimum Essence-------------------------------------------------------------
① 好発:中高年以降(50〜70歳代で好発)
② 安静時に手足の震えが出現(一側上肢or 下肢で発症) <安静時振戦>
③ 動作がゆっくりとなる.
字がだんだん小さくなる(動作緩慢)
表情の変化が乏しくなる(仮面様顔貌) <無動>
④ 前傾姿勢となり転びやすくなる <姿勢反射障害>
⑤ 歯車様, 鉛管様固縮がみられる <固縮>
2 〜 5 = <四大症状>
⑥ 歩行:すくみ足, 小刻み歩行, 加速歩行 <歩行障害 = 無動 + 姿勢反射障害>
⑦ 便秘, 排尿障害, 起立性低血圧, 脂漏性皮膚などが見られる

治療
① 薬物療法:L-dopa, ドパミンアゴニスト
② 手術療法:脳深部刺激療法


1. 発症と病態

• 好発年齢:中高年以降で, 年齢増加に強い相関
中脳の黒質が変性 → ドパミンが欠乏 大脳基底核による運動制御が障害

2. 症状

• 大脳基底核の機能が障害されたことによる錐体外路障害が主症状.
2.1. 四大症状
安静時振戦
無動
固縮
姿勢反射障害

安静時振戦( ↔︎ 企図振戦:小脳障害の症状)
安静時に振戦が生じ, 動作とともに消失する.
• pill – rolling tremor(ピル ローリング トレマー):指先で丸薬を丸めているような動きが特徴.
• Tapping様振戦:踵で床を打つような動きが特徴.
初発症状として出現する.
• 安静時振戦は, Parkinson症候群ではほとんどみられない.
• 安静時振戦は一側の上肢に始まり, 同側の下肢, 反対側の上肢, 下肢と, N字型に進行する.

無動
仮面様顔貌
• 動作緩慢
• 声が小さい
小字症
無動の診察
• 母子と示指をできるだけ早く打ち合わせてもらう
• できるだけ早く前腕を回内・回外させてもらう
→ Parkinson病では, 動きの幅が小さく, ゆっくりとしかできない

固縮(筋強剛)(rigidity)
錐体外路障害により, 運動の制御機構が障害され, 筋トーヌス(筋緊張)が亢進する.
鉛管様固縮, 歯車様固縮がみられる.
• 特に体幹の屈曲と回旋が苦手

姿勢反射障害
前傾姿勢
姿勢反射障害の診察
• 後方に向かって軽く押す, または引く → 棒のようにそのまま後ろへ倒れる or 後方への小刻み歩行




2.2. 歩行障害
• すくみ足(frozen gait)
• すり足歩行, 小刻み歩行
• 加速歩行(突進現象)
すくみ足改善の工夫
• 視覚による工夫:横断歩道など
• 聴覚による工夫:メトロノームなど

2.3. その他の症状, 徴候
自律神経症状
便秘・排尿障害, 起立性低血圧, 脂漏性皮膚(顔:ギトギト 手:カサカサ)

精神症状
抑うつ・不安, 認知症, 睡眠障害

その他
Myerson徴候, 幻視, 易転倒性(幻視 + 姿勢反射障害)

3. Hoehn & Yahrの重症度分類

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4. 治療

4.1. L-dopa(レボドパ)
• ドパミンは水溶性であり, 血液脳関門(BBB)を通過できない
→ ドパミンの前駆物質で, 脂溶性のL-dopaを経口投与する

① ドパミン
血液脳関門により脳内には入れない → 効果 ×
② L-dopa
血液脳関門を通過できるが, 抹消を循環している間に代謝され, 線条体で放出されるドパミンは不十分となる → 効果 △
③ L-dopa + カルビドパ
カルビドパが抹消での代謝を阻害することで, 線条体でドパミンが十分に放出される → 効果 ○

4.2. L-dopa(レボドパ)の副作用
4.2.1. 不随意運動(ジスキネジア)
• 自分の意思とは無関係に体が動いてしまう

4.2.2. wearing off 現象(ON – 0FF現象)
• L-dopaの有効時間が1〜2時間に短縮し, 次の服用までに効果が切れてしまうことで症状の悪化がみられることをいう.
• 錠剤を増やすのではなく, 服用回数を増やすことで補うとよいとされている(2錠3回/日 → 1錠2回 + 2錠1回/日).

4.3. 脳深部刺激療法(DBS)
• Parkinson病に対する代表的な手術療法で, 定位脳手術という方法によって行われる.
• 大脳基底核を刺激する


国家試験問題


(1)Parkinson病のすくみ足を改善させる方法はどれか (49a - 27)
1. 足下を注視する
2. 体幹を屈曲する
3. 踵を持ち上げる
4. 一歩目を小さく前に出す
5. 床に引かれた横線をまたぐ

(2)60歳の男性。10年前にParkinson病と診断された。日常生活は自立している。すくみ足のため自宅で頻回に転倒するようになった。この患者に対する指導で適切なのはどれか。 (48a - 11)
1. スリッパを履くように勧める
2. 足関節に重錘バンドを装着する
3. T字杖歩行を指導する
4. 車椅子での移動を指導する
5. 自宅での手すり設置の場所を指導する

(3)Parkinson病患者で早期に困難となる動作はどれか。ただし、いずれの動作も上肢での代償はないものとする。 (47p - 43)
1. 寝返り
2.平地歩行
3. 階段の昇り
4. 端座位の保持
5. 椅子からの立ち上がり






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