難病①ALS

ALS(筋萎縮性側索硬化症)

ー Minimum Essence ー
①好発:40〜50歳代(男:女 = 1.3 : 1)


・一側上肢の遠位端の筋力低下(母指球の萎縮)から始まり, 全身の筋萎縮, 線維束性収縮へと進行する
  <下位運動ニューロンの障害:上肢に強い>
・腱反射亢進, 病的反射(+) 
  <上位運動ニューロンの障害:下肢に強い>
・嚥下障害, 構音障害, 舌の萎縮など
  <球麻痺症状(延髄)>

③ 感覚障害, 排尿障害などはみられない

④ 「針筋電図」にて随意収縮時に高振幅電位, 安静時に線維束性収縮電位がみられる

⑤ 「筋生検」にて筋線維の群集萎縮がみられる

⑥ 鑑別疾患(MS, 腫瘍, 頸椎病変, 末梢神経障害など)が否定される

<治療>
• 根治療法はなく, 対症療法(リハビリ, 緩和ケアなど)が中心
• 薬物療法・リルゾール(進行を遅らせる)
• PEG(嚥下障害に対して)で胃に直接栄養する





1. ALSの概念

• 脊髄の側索錐体路(上位運動ニューロン)の変性や, 前角(下位運動ニューロン)の萎縮が起こる.
上位・下位運動ニューロンの障害によって筋萎縮が起こり, 筋力の低下が生じる
• 感覚障害, 自律神経障害は認められないことが多い.
→ 温痛覚・振動覚や聴覚・味覚などは正常.
→ 排尿・排便機能や, 瞳孔反射なども正常.
延髄に核がある脳神経(Ⅸ, Ⅹ, Ⅻ)が障害される(球麻痺).
→ 構音障害や嚥下障害などは障害されるが, 眼球運動等は正常


2. 代表的な初発症状

• 細かい作業が困難
• 何もないところでのつまずき
• 物が重く感じる
• 異常な疲労感
※1上記の症状により, 整形外科で見つかることが多い.
※2 初期のMMTでは筋力低下が軽度で異常がみられないことが多いので注意.


3. 病態と症状

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4. 手の筋萎縮

• 手の萎縮はALSの初期に現れやすく(遠位筋優位の筋力低下), 下位運動ニューロンの障害によって起こる. 特に, 母指球の萎縮によっては手の巧緻動作を制限する.
猿手 (ape hand) を呈する.
評価:母指対立筋および小指対立筋のMMTを行う
5. 舌の萎縮

舌下神経(Ⅻ)の障害により舌の筋萎縮が起こる.
• 舌の外側が薄くなることが多い.
• 舌の線維束性収縮が観察される.



6. 陰性症状

四大陰性症状
他の脳神経障害 : 眼球運動障害(外眼筋麻痺)は生じにくい.
感覚系障害   : 他覚的感覚障害はない
自律神経障害  : 膀胱直腸障害はない
自律神経障害  : 褥瘡が生じにくい( 自律神経障害がないため, 皮膚を灌流する血流が保たれる)

※ 近年, 人工呼吸器の装着により, 長期間の生存が可能となったため, それ故に眼球運動障害まで発現するケースもある. そのため, 眼球運動によるコミュニケーションすら絶たれてしまう
→ 「完全な閉じ込め状態(TLS)」となる. 閉じ込め症候群は, 橋出血によっても起こる.


7. 脊髄性筋萎縮症(SMA)

• 神経原生疾患は, 四肢遠位筋から筋力低下するのが通常だが, 例外的に四肢近位筋から筋力低下が起こる.
• SMAⅠ型(Werdnig – Hoffmann病):出生時からfloppy infant(筋緊張がない乳児)


8. その他

透明文字盤意思伝達装置(伝の心)などでコミュニケーションを図る



国家試験問題

(1)球麻痺から発症した筋萎縮性側索硬化症で歩行が可能な患者への対応で正しいのはどれか. (50a-27)
1. 胸郭のストレッチを指導する
2. 呼吸機能評価を1年に1回行う
3. 栄養指導は誤嚥を認めてから行う
4. 早期からプラスチック短下肢装具を導入する
5. 鉄アレイを用いた上肢筋力トレーニングを指導する


(2)55歳の男性. 筋萎縮性側索硬化症. 1年前から通勤時に右足がつまずくようになった. 最近は意識して膝を上にあげて歩行している. 腰椎MRIでは病的初見はなく, 針筋電図初見では両側の前脛骨筋に右優位の神経原性変化を認めた. 適切な対応はどれか. (49p-11)
1. 座位時は足を挙上しておく
2. 移動時に車椅子を利用する
3. 立ち上がり運動を繰り返す
4. 前脛骨筋に治療的電気刺激を行う
5. 右プラスチック短下肢装具を装着する


(3)筋萎縮性側索硬化症への対処で誤っているのはどれか. (42-68)
1. 起居動作の維持
2. 呼吸能力の維持
3. 自己導尿の確立
4. 関節拘縮の予防
5. 移動手段の確保



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